★NY株式市場では、主要三指数は全て反落する展開になった。ロシアとウクライナの外相会談で目立った進展がなく、ウクライナ情勢の緊迫が長引くとの懸念が高まると売りが先行した。さらに、2月消費者物価指数(CPI)が40年ぶり最大の伸びとなったことも嫌気された。連邦準備制度理事会(FRB)の利上げを警戒した売りも再燃し、終日軟調に推移した。ハイテクも金利の上昇を嫌気され下落した。一方、長期金利は、2月米消費者物価指数(CPI)は市場予想通りの結果となったものの、約40年ぶりの高さを記録した。インフレ加速への警戒感から債券売りが広がった。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利は上昇した一方で、主要三指数も反落したものの、イールドスプレッドは三指数ともに縮小した。前日比で縮小したことで割高感は強まった。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価がが売られやすい。米国株のVIX指数は32.45から30.23へ低下した。しかし、VIX指数が30台で推移していることで、ボラティリティの高い相場が継続している。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.272%
・直近イールドスプレッド縮小:20/09/1‐▲2.867%、20/10/12-▲2.847%
21/1/11-▲2.611%、21/10/21-▲2.758%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・3月9日:▲2.820%⇒3月10日:予想▲2.796%(前日比で縮小:割高)
3月10日のNYダウが反落した一方で、米長期金利は上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.272%から▲0.476%と平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.430%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.306%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.745%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.221%下回った。NYダウは、ロシアとウクライナの外相会談が不調に終わったことや、強い米2月消費者物価指数(CPI)を受けてインフレ高進懸念が強まったことが相場の重しとなった。前日に653ドル高と5日ぶりに大幅反発したNYダウは112.18ドル安(-0.34%)と反落した。シェブロン、ウォルマートが2%超上昇した一方、アップル、プロクター・アンド・ギャンブル、シスコ・システムズ、インテルが2%超下落した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.781%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・3月9日:▲3.133%⇒3月10日:予想▲3.114%(前日比で縮小:割高)
S&P500が反落した一方で、米長期金利は上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.781%から+0.333%と平均値より下方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲0.755%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲0.888%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.065%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.385%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.108%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.764%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、21/1/11-1.066%
21/2/16-1.144%、21/11/23-1.299%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・3月9日:▲1.606%⇒3月10日予想▲1.600%(前日比で縮小:割高)
NASDAQが反落した一方で、米長期金利は上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲1.764%から▲0.164%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.579%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲0.783%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲0.898%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.203%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.494%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利は上昇した一方で、株価が反落したものの前日比で縮小した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。ただ、NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.6%ちょうどまでスプレッドが縮小して、平均値を下回ってきたことで割高感はやや強まった。2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。