★NY株式市場では、主要三指数は全て続落する展開になった。バイデン大統領によるロシア産原油禁輸計画の発表を控えた原油高を警戒し、寄り付き後は下落した。その後、ウクライナのゼレンスキー大統領がNATO(北大西洋条約機構)加盟主張を断念する可能性など妥協姿勢を示したとの報道を受けて、停戦期待に一時買戻しが加速し大幅上昇に転じた。しかし、不透明感が払しょくできず、さらに、燃料価格上昇に伴うインフレ高進への懸念も重しとなり、引けにかけ再び下落した。ウクライナ情勢への懸念を背景に荒い値動きとなった。一方、長期金利は、ウクライナ情勢の緊迫化でエネルギー価格が高騰すると、インフレ加速を警戒する売り(利回りは上昇)が広がった。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利は大幅上昇した一方で、主要三指数は続落したもののイールドスプレッドは三指数ともに縮小した。米長期金利が大幅上昇しことで、米国株は続落したものの前日縮小したことで割高感は強まった。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価がが売られやすい。米国株のVIX指数は36.45から34.95へ低下した。しかし、VIX指数が30台で推移していることで、ボラティリティの高い相場が継続している。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.273%
・直近イールドスプレッド縮小:20/09/1‐▲2.867%、20/10/12-▲2.847%
21/1/11-▲2.611%、21/10/21-▲2.758%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・3月7日:▲3.062%⇒3月8日:予想▲3.015%(前日比で縮小:割高)
3月8日のNYダウが続落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.273%から▲0.258%と平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.211%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.087%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.526%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.002%下回った。NYダウは、ロシア・ウクライナ紛争の長期化見通しや、それを背景としたスタグフレーションへの懸念、米国の金融政策の先行き不透明感が引き続き相場の重しとなった。足もとで大きく下落したことや、米国がロシア産エネルギーの禁輸を発表し、悪材料が一旦出尽くしたとの見方から反発する場面もあったが、買い戻し一巡後は再び売りが強まった。前日までの3日間で1073ドル下落したNYダウは一時585ドル高まで上昇したが、184.74ドル安(-0.56%)で終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.781%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・3月7日:▲3.405%⇒3月8日:予想▲3.368%(前日比で縮小:割高)
S&P500は続落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.781%から+0.587%と平均値より下方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲0.501%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲0.634%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲0.811%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.131%下回った。20年3月23日の6.222%から▲2.854%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.764%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、21/1/11-1.066%
21/2/16-1.144%、21/11/23-1.299%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・3月7日:▲1.914%⇒3月8日予想▲1.848%(前日比で縮小:割高)
NASDAQは続落した一方で、米長期金利が大幅上昇したもののイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲1.764%から+0.084%平均値より上方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.331%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲0.535%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲0.650%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲0.955%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.246%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が大幅上昇した一方で、株価が続落したものの前日比で縮小した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。ただ、NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.8%台半ばまでスプレッドが拡大して、平均値を上回ってきたことで割高感はやや弱まっている。しかし、2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。