★NY株式市場では、主要三指数は全て続落する展開になった。原油価格の高騰でインフレ高進や景気後退への懸念が強まり、寄り付き後は下落した。ロシアとウクライナの3回目の停戦交渉で進展がなかったほか、議会超党派がロシア産原油・エネルギー製品の輸入禁止と、同国およびベラルーシとの通常の貿易関係を解消する内容を盛り込む法案で合意したとの報道で引けにかけて下げ幅を拡大した。主要国によるロシアへの制裁強化で世界景気が冷え込むとの懸念から投資家心理が悪化した面もあり、一時800ドル超下落した。一方、長期金利は、ウクライナ情勢の緊迫化でエネルギー価格が上昇傾向を強めると、インフレ加速を警戒する売り(利回りは上昇)が広がった。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利は上昇した一方で、主要三指数が大幅続落したことでイールドスプレッドは三指数ともに拡大した。米長期金利は上昇したが、米国株が大幅続落したことで、割高感は後退した。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価がが売られやすい。米国株のVIX指数は31.98から36.45へ上昇した。VIX指数が30台で推移していることで、ボラティリティの高い相場が継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.273%
・直近イールドスプレッド縮小:20/09/1‐▲2.867%、20/10/12-▲2.847%
21/1/11-▲2.611%、21/10/21-▲2.758%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・3月4日:▲2.984%⇒3月7日:予想▲3.058%(前日比で拡大:割安)
3月7日のNYダウが大幅続落した一方で、米長期金利は上昇したもののイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲3.273%から▲0.215%と平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.168%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.044%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.483%下回った。20年3月23日の6.017%から▲2.959%下回った。NYダウは、ロシア・ウクライナ紛争を背景にした原油高により、景気減速懸念やインフレ高進懸念が相場の重しとなった。NYダウは797.42ドル安(-2.37%)の32817.38ドルと大幅に3日続落した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.780%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・3月4日:▲3.289%⇒3月7日:予想▲3.402%(前日比で拡大:割安)
S&P500は大幅続落した一方で、米長期金利は上昇したもののイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.781%から+0.621%と平均値より下方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲0.467%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲0.600%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲0.777%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.097%下回った。20年3月23日の6.222%から▲2.820%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.764%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、21/1/11-1.066%
21/2/16-1.144%、21/11/23-1.299%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・3月4日:▲1.816%⇒3月7日予想▲1.910%(前日比で拡大:割安)
NASDAQは大幅続落した一方で、米長期金利は上昇したもののイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は割安)した。平均値の▲1.764%から+0.146%平均値より上方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.269%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲0.473%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲0.588%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲0.893%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.184%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が上昇した一方で、株価が大幅続落したことで前日比で大幅拡大した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。ただ、NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.9%台前半までスプレッドが拡大して、平均値を上回ってきたことで割高感は弱まった。しかし、2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。