★NY株式市場では、主要三指数は全て続落する展開になった。ロシアがウクライナ、欧州で最大の原発を制圧したことを警戒したアジアや欧州市場の流れを継いで寄り付き後は下落した。その後、2月雇用統計の予想以上に強い結果を受けて、下げ幅を縮小した。しかし、ウクライナ戦争激化への懸念を拭えず終日軟調に推移した。また、紛争の長期化が世界経済に悪影響を及ぼすとの懸念も強まり、一時540ドル超下げた。一方、長期金利は、ウクライナ情勢の一段の緊迫化で、相対的に安全資産とされる米国債に買い(利回りは低下)が集まった。市場では『週末にウクライナ情勢が動くことを見越して米国債に資金を逃避させる動きがあった』との声が聞かれた。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利が低下したうえ、主要三指数も続落したことでイールドスプレッドは三指数ともに大幅に拡大した。米長期金利が低下し米国株も続落したことで、割高感は後退した。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価がが売られやすい。米国株のVIX指数は30.48から31.98へ上昇した。VIX指数が30台で推移していることで、ボラティリティの高い相場が継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.273%
・直近イールドスプレッド縮小:20/09/1‐▲2.867%、20/10/12-▲2.847%
21/1/11-▲2.611%、21/10/21-▲2.758%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・3月3日:▲2.826%⇒3月4日:予想▲2.962%(前日比で拡大:割安)
3月4日のNYダウが続落したうえ、米長期金利が大幅低下したことでイールドスプレッドは前日比で大幅拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲3.273%から▲0.311%と平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.264%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.140%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.579%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.055%下回った。NYダウは、米2月雇用統計が強い結果となったものの、ロシア軍がウクライナの原子力発電所を占拠するなどしてウクライナ情勢が一段と悪化したことや、原油などの商品先物相場が上昇し、インフレ懸念や景気減速懸念を強めたことが重しとなった。NYダウは一時540ドル安まで下落し、179.86ドル安(-0.53%)の33614.80ドルと2日続落して終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.780%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・3月3日:▲3.132%⇒3月4日:予想▲3.284%(前日比で拡大:割安)
S&P500は続落したうえ、米長期金利も大幅低下したことでイールドスプレッドは前日比で大幅拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.780%から+0.504%と平均値より下方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲0.585%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲0.718%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲0.895%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.215%下回った。20年3月23日の6.222%から▲2.938%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.764%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、21/1/11-1.066%
21/2/16-1.144%、21/11/23-1.299%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・3月3日:▲1.638%⇒3月4日予想▲1.809%(前日比で拡大:割安)
NASDAQは大幅続落したうえ、米長期金利も大幅低下したことでイールドスプレッドは前日比で大幅拡大(米国10年債金利に対して米国株は割安)した。平均値の▲1.764%から+0.045%平均値より上方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.370%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲0.574%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲0.689%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲0.994%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.285%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が大幅低下したうえ、株価が大幅続落したことで前日比で大幅拡大した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。ただ、NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.8%台前半までスプレッドが拡大して、平均値を上回ってきたことで割高感は弱まった。しかし、2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。