★NY株式市場では、主要三指数は全て続伸する展開になった。製薬会社のファイザ―とバイオのバイオンテックが試験の暫定結果として、同社製ワクチンの3回目の投与でオミクロン変異株に効力がある可能性を指摘したため投資家心理が改善し、寄り付き後は上昇した。ハイテクの買いも引き続き強く相場を支えた。直近2日間で1000ドル超上昇しただけに、目先の利益を確定する目的の売りが相場の上値を抑えた。もっとも、ワクチン期待で引けにかけては再び強含んだ。一方、長期金利は、新型コロナウイルスの変異型『オミクロン株』のまん延が景気悪化につながるとの懸念が和らぎ、安全資産とされる米国債に売り(利回りは上昇)が出た。10年債入札が『米国債への需要の底堅さを示した』として買い(利回りは低下)が入る場面もあったが、反応は限られた。 今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、株価の反発と米長期金利が上昇したことで割高強まる結果となった。
世界的にオミクロン変異株の懸念が和らいできたほか、世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、株価にとっては、ネガティブな材料となりやすい。一方、米国株のVIX指数は21.89から19.90へ低下した。VIX指数が20台割れとなってきたことで、リスク回避の動きはやや緩和された。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.284%
・直近イールドスプレッド縮小:20/09/1‐▲2.867%、20/10/12-▲2.847%
21/1/11-▲2.611%、21/10/21-▲2.758%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・12月7日:▲2.966%⇒12月7日:予想▲2.912%(前日比で縮小:割高)
12月8日のNYダウは続伸したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.284%から▲0.372%と平均値より下方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.314%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.190%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.629%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.105%下回った。NYダウは、オミクロン株への警戒感の後退が引き続き支援となった。ファイザーが、コロナワクチンの3回目の接種がオミクロン株感染防止に有効だとし、2回の接種でも重症化を防げると発表したことでクルーズ、カジノ、空運などの経済活動再開銘柄が軒並み上昇した。米長期金利が上昇する中、アップルやメタ(フェイスブック)などのハイテク・ジャイアントの上昇も相場を押し上げた。月曜日に647ドル、火曜日に492ドル上昇したNYダウは、116ドル安まで下落したものの、35.32ドル高(+0.10%)と小幅に3日続伸して終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.779%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・12月7日:▲2.912%⇒12月8日:予想▲2.848%(前日比で縮小:割高)
S&P500が続伸したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.779%から+0.069%と平均値より下方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.021%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.154%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.331%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.651%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.374%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.769%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、21/1/11-1.066%
21/2/16-1.144%、21/11/23-1.299%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・12月7日:▲1.470%⇒12月8日予想▲1.400%(前日比で縮小:割高)
NASDAQは続伸したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲1.769%から▲0.369%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.779%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲0.983%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.098%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.403%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.694%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が上昇したうえ、株価も続伸したことで前日比で縮小した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.400%までスプレッドが縮小したことで、過熱感が強まった。2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。