★NY株式市場では、主要三指数は全て続落する展開になった。世界保健機関(WHO)の主任科学者が新型コロナウイルスのオミクロン変異株について、ワクチンで重症化を防げる公算大との考えを示したため不安が緩和し、寄り付き後は上昇し一時520ドル高水準まで上昇した。その後、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が下院金融サービス委での証言で量的緩和(QE)縮小を早める可能性を再表明し上げ幅を縮小した。引けにかけに、疾病管理予防センター(CDC)が国内初のオミクロン変異株感染を確認したと発表、投資家心理が悪化し大きく下落に転じた。一方、長期金利は、米国株の反発で安全資産とされる米国債には売り(利回りは上昇)が先行したものの、株が失速すると一転買い(利回りは低下)が優勢になった。米国で新型コロナウイルスの新たな変異株『オミクロン株』の感染者が初めて確認されたと伝わると、買いが加速した。 今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、株価の下落調整と米長期金利が低下したことで割高感解消傾向に向かっている。
世界的にオミクロン変異株の感染拡大懸念されてきたほか、世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、株価にとっては、ネガティブな材料となりやすい。一方、米国株のVIX指数は27.19から31.12へ大幅上昇した。VIX指数が30台に上昇していることで、リスク回避の動きが強まっている。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.284%
・直近イールドスプレッド縮小:20/09/1‐▲2.867%、20/10/12-▲2.847%
21/1/11-▲2.611%、21/10/21-▲2.758%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・11月30日:▲3.123%⇒12月1日:予想▲3.228%(前日比で拡大:割安)
12月1日のNYダウは大幅下落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲3.284%から▲0.056%と平均値より下方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲0.998%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲0.874%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.313%下回った。20年3月23日の6.017%から▲2.789%下回った。NYダウは、上昇してスタートしたものの、米疾病対策センター(CDC)が米国内で初の新型コロナウイルス・オミクロン株への感染者が確認されたと発表したことで大きく反落した。市場では節税対策の損失確定売りが下げを加速させたとの見方もあった。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長がテーパリング(資産購入の段階的縮小)の加速に言及したことなどで前日に652ドル安となったNYダウは、朝方に520ドル高まで上昇したが、初のオミクロン株感染者確認のニュースを受けて461.68ドル安(-1.34%)と大幅続落して終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.778%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・11月30日:▲3.049%⇒12月1日:予想▲3.146%(前日比で拡大:割安)
S&P500が大幅下落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.778%から+0.368%と平均値より下方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲0.723%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲0.856%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.033%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.353%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.076%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.770%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、21/1/11-1.066%
21/2/16-1.144%、21/11/23-1.299%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・11月30日:▲1.572%⇒12月1日予想▲1.671%(前日比で拡大:割安)
NASDAQは大幅下落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲1.770%から▲0.099%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.508%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲0.712%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲0.827%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.132%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.423%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が低下したうえ、株価も下落したことで前日比で拡大した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.6%台後半で推移している。ただ、2%台に拡大するまでは割安にはなり難い。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。