★NY株式市場では、主要三指数が全て反落する展開になった。世界のインフレ高進や新型コロナ再流行を受け経済の回復が損なわれるとの懸念に寄り付き後は下落した。ハイテク株も売られたほか、アマゾン・ドット・コムが来年から英国のサイトでビザのクレジットカードの利用を停止すると伝わり、同社株が4.7%下落した。1銘柄でNYダウを63ドル程度押し下げた。米長期金利の低下で、ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースなど金融株も売られた。一方、長期金利は、米国株相場が下落すると、相対的に安全資産とされる米国債に買い(利回りは低下)が入った。20年債入札が低調だったことが伝わると、売り(利回りは上昇)が出る場面もあったが反応は一時的だった。 今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利が上昇してきていることから、割高感が出始めてきている。
世界的に感染拡大が縮小してきており、世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、株価にとっては、ネガティブな材料となりやすい。一方、米国株のVIX指数は16.49から16.37へ低下した。VIX指数は20を下回っていることもあり、過度なリスク回避の動きにはつながっていない。しかし、インフレ高進警戒感から米長期金利が上昇しやすいことや株高も並行していることもあり、徐々に米国株式市場全般に割高感が浮上してきている。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.286%
・直近イールドスプレッド縮小:20/09/1‐▲2.867%、20/10/12-▲2.847%
21/1/11-▲2.611%、21/10/21-▲2.758%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・11月16日:▲2.874%⇒11月17日:予想▲2.952%(前日比で拡大:割安)
11月17日のNYダウは反落したうえ、米長期金利も大幅低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲3.286%から▲0.334%と平均値より下方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.274%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.150%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.589%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.065%下回った。NYダウは、主要3指数が最高値に接近し高値警戒感が意識される中、主要小売株の決算が市場予想を上回ったものの、コストアップによる今後の利益率悪化懸念が重石となった。NYダウは211.17ドル安(-0.58%)と反落。ビザが4.70%安、ゴールドマン・サックスが2.86%安となり2銘柄でダウ平均を約143ドル押し下げた。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.778%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・11月16日:▲2.716%⇒11月17日:予想▲2.780%(前日比で拡大:割安)
S&P500が反落したうえ、米長期金利も大幅低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.778%から+0.002%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.089%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.222%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.399%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.719%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.442%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.771%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、21/1/11-1.066%
21/2/16-1.144%、21/10/21-1.342%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・11月16日:▲1.296%⇒11月17日予想▲1.358%(前日比で拡大:割安)
NASDAQは反落したうえ、米長期金利も大幅低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は割安)した。平均値の▲1.771%から▲0.413%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.821%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲1.025%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.140%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.445%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.736%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が大幅低下したうえ、株価も反落したことで前日比で拡大した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.3%台半ばまで縮小推移していることで割高感は強まっている。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。