★NY株式市場では、主要三指数は全て続落する展開になった。10月消費者物価指数(CPI)が予想を上回り30年ぶり最大の伸びを記録したためインフレ加速が警戒され寄り付き後は下落した。金利の上昇でハイテク株も売られ、終日軟調に推移した。NYダウは史上最高値圏にあるだけに、利益確定目的の売りも出やすかった。一方、長期金利は、10月米消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったことを受けて、米早期利上げ観測が高まると債券売り(利回りは上昇)が広がった。30年債入札が『低調』と受け止められたことも相場の重石になった。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利が上昇してきていることから、やや割高感が出始めてきている。
世界的に感染拡大が縮小してきており、世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、株価にとっては、ネガティブな材料となりやすい。一方、米国株のVIX指数は17.78から18.73へ上昇した。ただ、VIX指数が20を下回っていることもあり、過度なリスク回避の動きにはつながっていない。しかし、米長期金利が上昇しやすいことや株高が並行していることもあり、徐々に米国株式市場全般に割高感が浮上してきている。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.286%
・直近イールドスプレッド縮小:20/09/1‐▲2.867%、20/10/12-▲2.847%
21/1/11-▲2.611%、21/10/21-▲2.758%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・11月9日:▲3.019%⇒11月10日:予想▲2.934%(前日比で縮小:割高)
11月11日のNYダウは続落した一方で、米長期金利も大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.286%から▲0.352%と平均値より下方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.292%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.168%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.607%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.083%下回った。NYダウは、米10月消費者物価指数(CPI)が予想以上に上昇し、30年ぶりの強い結果となったことで米長期金利が上昇した。午後の米30年債入札が低調だったことも長期金利を押し上げた。金利上昇により将来の利益の現在価値が減少するハイテク・グロース株が幅広く売りに押された。NYダウは終盤に310ドル安まで下落し、240.04ドル安(-0.66%)と2日続落して終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.778%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・11月9日:▲2.926%⇒11月10日:予想▲2.847%(前日比で縮小:割高)
S&P500が続落した一方で、米長期金利も大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.778%から+0.069%と平均値より上方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.022%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.155%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.332%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.652%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.375%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.772%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、21/1/11-1.066%
21/2/16-1.144%、21/10/21-1.342%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・11月9日:▲1.508%⇒11月10日予想▲1.443%(前日比で縮小:割高)
NASDAQは続落したうえ、米長期金利も大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲1.772%から▲0.329%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.736%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲0.940%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.055%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.360%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.651%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が大幅上昇した一方で、株価は続落したものの前日比で縮小した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.4%台半ばまで縮小推移していることで割高感が残っている。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。