★NY株式市場では、主要三指数は全て大幅反落する展開になった。中国の不動産開発大手、中国恒大集団と傘下の不動産サービス部門の株式取引が香港市場で停止との報道が嫌気され、寄り付き後は下落した。石油輸出国機構(OPEC)プラス会合で、大幅増産が回避されNY原油先物がほぼ7年ぶり高値を更新したほか、セントルイス連銀のブラード総裁も高インフレが2022年まで続く可能性を示唆し、インフレ警戒感も売り材料となった。また、与野党の対立で、バイデン大統領が債務上限突破のリスクを警告したことも嫌気され、大幅下落となった。一方、長期金利は、原油先物相場の急騰を受けて、インフレ圧力の高まりが改めて意識されると債券売り(利回りは上昇)が広がった。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、以前と比べて三指数とも割高感は解消されてきている。
感染拡大が縮小することや新型コロナウイルスのワクチン・治療薬の投与が世界的に普及するなど、終息の方向が出るまでは不安定な市場が続きやすい。しかし、追加経済対策期待や経済活動再開で先行きの景気回復の期待感が株価を支えてきた。ところが、このところの米景気回復基調にピークアウト感のほか、中国大手不動産の恒大集団の経営危機懸念が株価の下押し要因となりやすい。VIX指数は21.15から22.96へ上昇した。再びVIX指数が20を上回っていることもあり、相場的には不安定化している。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。
そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.290%
・直近イールドスプレッド縮小:19/4/25-▲3.048%、20/09/1‐▲2.867%
20/10/12-▲2.847%、21/1/11-▲2.611%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・10月1日:▲3.115%⇒10月4日:予想▲3.140%(前日比で拡大:割安)
10月4日のNYダウは大幅反落した一方で、米長期金利は上昇したもののイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲3.290%から▲0.150%と平均値より下方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.086%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲0.962%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.401%下回った。20年3月23日の6.017%から▲2.877%下回った。NYダウは、長期金利の上昇が嫌気されハイテク・グロース株が総じて下落する中、元社員の告発を受けたフェイスブック(-4.89%)の大幅安も重しとなった。先週末に482ドル高となったNYダウは323.54ドル安(-0.94%)と反落した。新型コロナウイルスの経口治療薬の開発が引き続き好感されたメルクが2%超上昇したものの、ビザ、アップル、マイクロソフトが2%超下落し、セールスフォース、ゴールドマン・サックス、ウォルト・ディズニーなども1%超下落した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.777%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・10月1日:▲3.065%⇒10月4日:予想▲3.106%(前日比で拡大:割安)
S&P500が大幅反落した一方で、米長期金利は上昇したもののイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.777%から+0.329%と平均値より上方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲0.763%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲0.896%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.073%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.393%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.116%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.774%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、20/12/4-1.351%
21/1/11-1.066%、21/2/16-1.144%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・10月1日:▲1.691%⇒10月4日予想▲1.739%(前日比で拡大:割安)
NASDAQは大幅反落した一方で、米長期金利は上昇したもののイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は割安)した。平均値の▲1.774%から▲0.035%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.440%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲0.644%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲0.759%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.064%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.355%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が上昇した一方で、株価は大幅反落したことで前日比で拡大した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.7%台前半で推移しているが、2%台まで拡大するまでは割安とは言えない。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。