★NY株式市場では、三指数全てが上昇する展開になった。新型コロナウイルスのデルタ変異株流行や財政支援の縮小に伴う景気回復の失速懸念が根強く、寄り付き後は小幅下落した。しかし、9月NY連銀製造業景気指数が予想のほぼ2倍に上昇したほか、原油高でエネルギー関連株が上昇すると警戒感が緩和し、上昇に転じた。前日に約2カ月ぶりの安値を付けたあとだけに押し目買いなどが入った。増配と自社株買いを発表したマイクロソフトが堅調に推移したことも相場の押し上げ、引けにかけて上げ幅をさらに拡大した。一方、長期金利は、9月米NY連銀製造業景気指数が予想を上回ったことで、債券売り(利回りは上昇)が先行した。米国株相場の上昇も相場の重しとなった。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、以前と比べて三指数とも割高感は解消されてきている。
感染拡大が縮小することや新型コロナウイルスのワクチン・治療薬の投与が世界的に普及するなど、終息の方向が出るまでは不安定な市場が続きやすい。しかし、追加経済対策期待や経済活動再開で先行きの景気回復の期待感が株価を支えてきた。ところが、このところの米景気回復基調にピークアウト感が株価の下押し要因となりやすい。VIX指数は19.46から18.18へ低下した。VIX指数は上昇したものの20を下回っていることで、相場は安定化へ向かっている。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。
そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.290%
・直近イールドスプレッド縮小:19/4/25-▲3.048%、20/09/1‐▲2.867%
20/10/12-▲2.847%、21/1/11-▲2.611%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・9月14日:▲3.217%⇒9月15日:予想▲3.176%(前日比で縮小:割高)
9月15日のNYダウは反発したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.290%から▲0.114%と平均値より下方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.050%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲0.926%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.365%下回った。20年3月23日の6.017%から▲2.841%下回った。NYダウは、9月NY連銀製造業業況指数が強い結果となり、エネルギー、金融などの景気敏感株を中心に幅広い銘柄が上昇した。JPモルガンが企業業績の好調見通しを理由に、S&P500が年内に4700ポイントに達し、来年は5000ポイントを上回ると予想したこともセンチメントの改善につながった。NYダウはほぼ変わらずでスタート後、303ドル高まで上昇し、236.82(+0.68%)と反発して終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.775%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・9月14日:▲3.147%⇒9月15日:予想▲3.099%(前日比で縮小:割高)
S&P500が反発したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.775%から+0.324%と平均値より上方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲0.770%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲0.903%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.080%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.400%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.123%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.775%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、20/12/4-1.351%
21/1/11-1.066%、21/2/16-1.144%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・9月14日:▲1.745%⇒9月15日予想▲1.710%(前日比で縮小:割高)
NASDAQが反発したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲1.775%から▲0.065%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.469%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲0.673%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲0.788%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.093%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.383%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が上昇したうえ、株価も反発したことで前日比で縮小した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.7%台前半までスプレッドが拡大してきているが、2%台まで拡大するまでは割安とは言えない。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。