★NY株式市場では、三主要株価指数は全て続落する展開になった。押し目買いが強まり、上昇して寄り付いた。しかし、8月生産者物価指数(PPI)の引き続き大幅な伸びで、高インフレへの警戒感で売りに拍車がかかり下落に転じた。民主党が企業の自社株買いに対する課税案を検討しているなどの報道や2001年9月11日の同時多発テロから20周年を迎え地政学的リスクなどが懸念された。また、米エピック・ゲームズがアップルを反トラスト法(独占禁止法)違反と訴えていた裁判で、カリフォルニア州の連邦地裁はアップルに対しアプリ市場の規約を緩和し、外部課金を認めるよう命じる判決を出した。これを受けてアップル株が3%超の大幅下落となり、指数を押し下げた。前日にバイデン米政権が薬価引き下げの包括案を発表したことで、製薬株も引き続き売られた。一方、長期金利は、8月米卸売物価指数(PPI)が予想を上回ったことが分かると、インフレへの懸念から債券売り(利回りは上昇)が優勢となった。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、以前と比べて三指数とも割高感は解消されてきている。
感染拡大が縮小することや新型コロナウイルスのワクチン・治療薬の投与が世界的に普及するなど、終息の方向が出るまでは不安定な市場が続きやすい。しかし、追加経済対策期待や経済活動再開で先行きの景気回復の期待感が株価を支えてきた。ところが、このところの米景気回復基調にピークアウト感が株価の下押し要因となりやすい。VIX指数は18.80から20.95へ上昇した。VIX指数が20を上回ってきたことで、相場が不安定化してきているので注意が必要。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。
そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.290%
・直近イールドスプレッド縮小:19/4/25-▲3.048%、20/09/1‐▲2.867%
20/10/12-▲2.847%、21/1/11-▲2.611%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・9月9日:▲3.147%⇒9月10日:予想▲3.144%(前日比で縮小:割高)
9月10日のNYダウは続落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.290%から▲0.146%と平均値より下方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.082%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲0.958%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.397%下回った。20年3月23日の6.017%から▲2.873%下回った。NYダウは、上昇してスタートしたが、インフレ懸念などが重しとなり終盤に売りが強まった。NYダウは271.66ドル安(-0.78%)と5日続落した。朝方は、前日引け後にバイデン米大統領が従業員100人以上の企業にワクチン接種を義務付ける方針を打ち出すなどワクチン・マンデートを強化したことでワクチン接種進展による経済活動正常化期待から一時224ドル高まで上昇する場面もあった。しかし、アップルが3.31%下落したことや、米8月生産者物価指数(PPI)が市場予想を上回り、早期テーパリング懸念が高まったことでほぼ安値引けとなった。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.775%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・9月9日:▲3.085%⇒9月10日:予想▲3.081%(前日比で縮小:割高)
S&P500が続落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.775%から+0.306%と平均値より上方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲0.788%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲0.921%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.098%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.418%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.141%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.775%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、20/12/4-1.351%
21/1/11-1.066%、21/2/16-1.144%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・9月9日:▲1.698%⇒9月10日予想▲1.686%(前日比で縮小:割高)
NASDAQが続落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲1.775%から▲0.089%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.493%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲0.697%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲0.812%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.117%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.408%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が大幅上昇した一方で、株価は続落したものの前日比で縮小した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.6%台後半までスプレッドが拡大してきた。米長期金利の上昇やネガティブなニュースが出ると引き続き下落(利回りは上昇)しやすい地合いが続いている。また、2%台まで拡大するまでは割安とは言えない。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。