★NY株式市場では、NYダウとS&P500指数は下落した一方で、ナスダック総合指数は反発する展開になった。新型コロナウイルスの変異株で感染力が強いデルタ株が中国など世界各地で流行し、経済正常化が遅れるとの懸念から売りが優勢となった。また、国内の新型コロナ感染件数が6カ月ぶり高水準に達し、ニューヨークで2年ぶり開催が予定されていた国際オートショーやニューオーリンズで10月に開催予定だったジャズフェスティバルの中止が相次いで発表され、投資家心理が悪化した。景気回復が損なわれるとの懸念に、寄り付き後は下落した。しかし、6月JOLT求人件数が過去最高を記録し、労働市場の改善が明らかになると警戒感が緩和し、下げ止まった。ナスダック総合指数は小幅高となった。一方、長期金利は、前週末の7月米雇用統計に続き、本日発表の6月米JOLTS労働力調査の求人数が過去最高を記録すると、労働市場の改善が裏付けられ、債券売り(利回りは上昇)を誘った。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、以前と比べて三指数とも割高感は解消されてきている。
感染拡大が縮小することや新型コロナウイルスのワクチン・治療薬の投与が世界的に普及するなど、終息の方向が出るまでは不安定な市場が続きやすい。しかし、追加経済対策期待や経済活動再開で先行きの景気回復の期待感が株価を支えてきた。ところが、このところの米景気回復基調にピークアウト感が株価の下押し要因となりやすい。VIX指数は16.15から16.72へ上昇した。VIX指数は20を下回る展開になっており、相場安定化の動きになっている。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。
そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.292%
・直近イールドスプレッド縮小:19/4/25-▲3.048%、20/09/1‐▲2.867%
20/10/12-▲2.847%、21/1/11-▲2.611%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・8月6日:▲3.169%⇒8月9日:予想▲3.163%(前日比で縮小:割高)
8月9日のNYダウが反落した一方で、米長期金利が上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.292%から▲0.129%と平均値より下方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.063%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲0.939%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.378%下回った。20年3月23日の6.017%から▲2.854%下回った。NYダウは、新型コロナウイルス変異株の感染拡大が続き、世界経済の減速懸念が重石となった。原油相場の下落を受けてエネルギー株が下落したほか、米国でクルーズ船の乗客などにワクチン接種を求めたことで経済活動再開銘柄も幅広く下落した。強い米7月雇用統計を好感し先週末に最高値で終了したNYダウは106.66ドル安(-0.30%)と3日ぶりに反落した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.772%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・8月6日:▲3.104%⇒8月9日:予想▲3.088%(前日比で縮小:割高)
S&P500は小反落した一方で、米長期金利が上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.772%から+0.316%と平均値より上方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲0.781%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲0.914%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.091%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.411%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.134%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.776%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、20/12/4-1.351%
21/1/11-1.066%、21/2/16-1.144%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・8月6日:▲1.700%⇒8月9日予想▲1.676%(前日比で縮小:割高)
NASDAQが反発したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲1.776%から▲0.100%平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.503%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲0.707%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲0.822%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.127%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.418%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が上昇したうえ、株価も反発したものの前日比で縮小した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.6%台後半までスプレッドが拡大してきた。そのため、割高感はだいぶ薄れてきた。しかし、米長期金利の上昇やネガティブなニュースが出ると引き続き下落しやすい地合いが続いている。また、2%台まで拡大するまでは割安とは言えない。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。