★NY株式市場では、主要三指数全てが下落する展開になった。東京で4回目の緊急事態宣言が発動され、五輪5者協議で都内の会場すべて『無観客』が決定されたとの報道をきっかけに新型コロナウイルス変異株流行が世界経済の回復を妨げるとの懸念が強まり、寄り付き後は下落した。新規失業保険申請件数も予想外に増加したため、景気回復に懐疑的見方が広がり、終日軟調に推移した。史上最高値付近での利益確定売りにハイテク株も下落した。市場では『米長期金利の低下も米景気の減速懸念を高めた』との声が聞かれた。一方、長期金利は、世界で新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、景気回復が遅れかねないとの懸念から、相対的に安全資産とされる米国債に買い(利回りは低下)が集まった。市場では『空売りの持ち高を積み上げていた投資家の買い戻しが見られた』との指摘もあり、利回りは一時1.2479%前後と2月16日以来約5カ月ぶりの低水準を付けた。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、以前と比べて三指数とも割高感は幾分解消されてきている。
感染拡大が縮小することや新型コロナウイルスのワクチン・治療薬の投与が世界的に普及するなど、終息の方向が出るまでは不安定な市場が続きやすい。しかし、追加経済対策期待や経済活動再開で先行きの景気回復の期待感が株価を支えてきた。ところが、このところの米景気回復基調にピークアウト感が株価の下押し要因となりやすい。VIX指数は16.30から19.00へ上昇した。VIX指数は再び20を下回っているものの、急速にリスク回避の動きが高まってきていることから注意が必要である。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。
そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.293%
・直近イールドスプレッド縮小:19/4/25-▲3.048%、20/09/1‐▲2.867%
20/10/12-▲2.847%、21/1/11-▲2.611%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・7月7日:▲2.966%⇒7月8日:予想▲3.018%(前日比で拡大:割安)
7月8日のNYダウが下落したうえ、米長期金利が大幅低下したことでイールドスプレッドは前日比で大幅拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲3.293%から▲0.275%と平均値より下方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.208%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.084%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.523%下回った。20年3月23日の6.017%から▲2.999%下回った。世界各国でコロナ変異株による感染拡大が続く中、東京で緊急事態宣言が発出されたほか、米国では新規失業保険申請件数が予想以上に増加し、景気回復のピークアウト懸念が強まった。リスク回避の強まりで米国債が買われた(利回りは低下)一方、史上最高値圏で推移する米国株は幅広い銘柄が売りに押された。NYダウは朝方に536ドル安まで下落し、259.86ドル安(-0.75%)で終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.770%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・7月7日:▲2.920%⇒7月8日:予想▲2.978%(前日比で拡大:割安)
S&P500は下落したうえ、米長期金利が大幅低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.770%から+0.208%と平均値より上方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲0.891%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.024%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.201%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.521%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.244%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.777%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、20/12/4-1.351%
21/1/11-1.066%、21/2/16-1.144%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・7月7日:▲1.540%⇒7月8日予想▲1.582%(前日比で拡大:割安)
NASDAQが下落したうえ、米長期金利が大幅低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は割安)した。平均値の▲1.777%から▲0.195%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.597%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲0.801%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲0.916%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.221%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.512%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が大幅低下したうえ、株価も下落したことで前日比で拡大した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.5%台後半まで縮小して推移している。そのため、割高感が続いていることから、ネガティブなニュースが出ると引き続き下落しやすい地合いが続いている。また、2%台まで拡大するまでは割安とは言えない。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。