★NY株式市場では、主要三指数が全て上昇する展開になった。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ前倒し観測で、前週今年最大の下げ幅となった反動から買い戻しが優勢となった。市場では『前週の株売りは行き過ぎだった』との声が聞かれ、景気敏感株を中心に買い直されると一時610ドル超上げた。米経済が新型コロナウイルス禍から回復する中、エネルギー株の上昇が目立った。NY連銀のウィリアムズ総裁が経済の強さが金融政策を修正するにはまだ不十分であるとの見解を示すと引けにかけて、上げ幅を拡大した。10年債利回りが依然1.5%割れで安定しているためハイテク株も買われた。一方、米長期金利は、利回りは時間外取引で一時1.3526%前後まで低下する場面もあったが、通常取引では一転1.4954%前後まで上昇した。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ前倒しによる景気減速を意識した債券買い(利回りは低下)は行き過ぎとの見方から、売り(利回りは上昇)が優勢になった。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、以前と比べて三指数とも割高感が残っており、リスク回避の材料が出ると下落しやすい。
感染拡大が縮小することや新型コロナウイルスのワクチン・治療薬の投与が世界的に普及するなど、終息の方向が出るまでは不安定な市場が続きやすい。しかし、追加経済対策期待や経済活動再開で先行きの景気回復の期待感が株価を押し上げている。米FRBが長期金利の上昇に懸念を示すまでは上昇基調が続く可能性があり、株価の下押し要因となりやすい。VIX指数は20.70から17.89へ低下した。VIX指数は再び20を下回ったことで市場ではリスク回避の動きは後退した。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。
そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.295%
・直近イールドスプレッド縮小:19/4/25-▲3.048%、20/09/1‐▲2.867%
20/10/12-▲2.847%、21/1/11-▲2.611%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・6月18日:▲3.072%⇒6月21日:予想▲2.934%(前日比で縮小:割高)
6月21日のNYダウは大幅反発したうえ、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で大幅に縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.295%から▲0.361%と平均値より下方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.292%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.168%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.607%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.083%下回った。NYダウは、FRBの突然のタカ派シフトを嫌気して先週大きく下落した米国株は買い戻しが優勢になった。先週1週間で3.4%安と昨年10月以来の大幅安を記録したNYダウは586.89ドル高(+1.76%)と6営業日ぶりに反発した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.770%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・6月18日:▲2.970%⇒6月21日:予想▲2.849%(前日比で縮小:割高)
S&P500は大幅反発したうえ、米長期金利も大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.770%から+0.121%と平均値より上方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.020%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.153%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.330%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.650%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.373%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.778%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、20/12/4-1.351%
21/1/11-1.066%、21/2/16-1.144%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・6月18日:▲1.565%⇒6月21日予想▲1.482%(前日比で縮小:割高)
NASDAQは大幅反発したうえ、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲1.778%から▲0.296%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.697%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲0.901%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.016%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.321%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.612%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が大幅上昇たうえ、株価も大幅反発したことで縮小した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.4%台後半まで縮小して推移している。そのため、割高感が続いていることから、ネガティブなニュースが出ると引き続き下落しやすい地合いが続いている。また、2%台まで拡大するまでは割安とは言えない。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。