★NY株式市場では、三指数とも小幅続伸する展開になった。米金融緩和策の継続期待などを背景に買いが先行したものの、その後失速しマイナス圏に沈む場面があった。来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えて様子見姿勢が強まる中、方向感が出にくい面もあった。NYダウは高値圏での利益確定売りに押され、おおむねマイナス圏での推移となったが、引けにかけて下げ幅を縮小し、プラスに転じた。ナスダックは長期金利が安定して推移していることが追い風になった。一方、米長期金利は、足もとで相場上昇が続いたあとだけに週末を迎えたポジション調整目的の売り(利回りは上昇)が出た。 今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、以前と比べて三指数ともかなり割高感が残っており、リスク回避の材料が出ると下落しやすい。
感染拡大が縮小することや新型コロナウイルスのワクチン・治療薬の投与が世界的に普及するなど、終息の方向が出るまでは不安定な市場が続きやすい。しかし、追加経済対策期待や経済活動再開で先行きの景気回復の期待感が株価を押し上げている。米FRBが長期金利の上昇に懸念を示すまでは上昇基調が続く可能性があり、株価の下押し要因となりやすい。VIX指数は16.10から15.65に低下した。VIX指数が低下したうえ、20を下回っていることで市場の安定化を維持している。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。
そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.296%
・直近イールドスプレッド縮小:19/4/25-▲3.048%、20/09/1‐▲2.867%
20/10/12-▲2.847%、21/1/11-▲2.611%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・6月10日:▲3.006%⇒6月11日:予想▲2.995%(前日比で縮小:割高)
6月11日のNYダウは小幅続伸したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.296%から▲0.301%と平均値より下方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.231%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.107%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.546%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.022%下回った。NYダウは、翌週にFOMCを控えていることや週末の取引で上値の重い展開ながらも、米長期金利の低下が支援となり底堅い展開となった。前日の米5月消費者物価指数(CPI)は2008年以来の高い伸びを記録し、市場予想を上回ったが、インフレは一時的との見方から米長期債利回りが低下。この日も米10年債利回りは2月下旬以来となる1.43%割れまで低下した。NYダウは寄り後に151ドル高まで上昇後、137ドル安まで反落したが、13.36ドル高(+0.04%)とわずかに続伸して終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.770%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・6月10日:▲2.885%⇒6月11日:予想▲2.867%(前日比で縮小:割高)
S&P500は小幅続伸したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.770%から+0.097%と平均値より上方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.002%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.135%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.312%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.632%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.355%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.779%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、20/12/4-1.351%
21/1/11-1.066%、21/2/16-1.144%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・6月10日:▲1.560%⇒6月11日予想▲1.540%(前日比で縮小:割高)
NASDAQは小幅続伸したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲1.779%から▲0.239%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.639%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲0.843%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲0.958%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.263%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.554%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が上昇したうえ、株価が小幅続伸したことで縮小した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.5%台半ばまで縮小して推移している。そのため、割高感が続いていることから、ネガティブなニュースが出ると引き続き下落しやすい地合いが続いている。また、2%台まで拡大するまでは割安とは言えない。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。