★NY株式市場では、三指数共に小幅に反発する展開になった。雇用統計をはじめとする雇用関連指標の発表を週後半に控え、様子見姿勢が強い中でも、米経済活動の正常化による景気回復期待が引き続き支援材料となった。ただ、NYダウは史上最高値近辺にあり、短期的な利益確定売りも出て上値は重かった。足元で株価上昇が続いていた景気敏感株を中心に利益確定の売りも強く、マイナス圏に沈む場面もあった。ナスダックは終日方向感に欠ける展開となったが、引けにかけて下げ幅を縮小して上昇に転じた。一方、米長期金利は、週末の5月米雇用統計を控えて、持ち高調整目的の買い(利回りは低下)が優勢となった。なお、ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁は『量的緩和の縮小(テーパリング)の検討を考える時期に来ているかもしれない』と述べたが、相場の反応は限られた。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、以前と比べて三指数ともかなり割高感が残っており、リスク回避の材料が出ると下落しやすい。
感染拡大が縮小することや新型コロナウイルスのワクチン・治療薬の投与が世界的に普及するなど、終息の方向が出るまでは不安定な市場が続きやすい。しかし、追加経済対策期待や経済活動再開で先行きの景気回復の期待感が株価を押し上げている。米FRBが長期金利の上昇に懸念を示すまでは上昇基調が続く可能性があり、株価の下押し要因となりやすい。VIX指数は17.90から17.48に低下した。ただ、VIX指数が再び20を下回っていることで、市場は安定化してきている。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。
そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.297%
・直近イールドスプレッド縮小:19/4/25-▲3.048%、20/09/1‐▲2.867%
20/10/12-▲2.847%、21/1/11-▲2.611%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・6月1日:▲2.881%⇒6月2日:予想▲2.901%(前日比で拡大:割安)
6月2日のNYダウは小幅続伸した一方で、米長期金利が大幅低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲3.297%から▲0.396%と平均値より下方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.325%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.201%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.640%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.116%下回った。NYダウは、原油高を受けてエネルギー株が続伸したほか、空運、クルーズなどの経済活動再開銘柄が総じて上昇した。ハイテク・グロース株はテスラが下落したものの、エヌビディアなど半導体株が上昇し、時価総額最大のアップルも6日ぶりに反発した。一方、前日上昇した素材や資本財の一角は利益確定売りに押された。NYダウは131ドル高まで上昇後、29ドル安まで下落したが、25.07ドル高(+0.07%)と小幅に5日続伸して終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.770%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・6月1日:▲2.748%⇒6月2日:予想▲2.767%(前日比で拡大:割安)
S&P500は小幅反発した一方で、米長期金利は大幅低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.770%から▲0.003%と平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.102%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.235%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.412%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.732%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.455%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.780%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、20/12/4-1.351%
21/1/11-1.066%、21/2/16-1.144%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・6月1日:▲1.453%⇒6月2日予想▲1.472%(前日比で拡大:割安)
NASDAQは小幅反発した一方で、米長期金利は大幅低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は割安)した。平均値の▲1.780%から▲0.308%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.707%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲0.911%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.026%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.331%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.622%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が大幅低下した一方で、株価は小幅反発したものの拡大した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.4%台後半まで縮小して推移している。そのため、割高感が続いていることから、ネガティブなニュースが出ると引き続き下落しやすい地合いが続いている。また、2%台まで拡大するまでは割安とは言えない。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。