★NY株式市場では、NYダウは続伸したものの、S&P500指数とナスダック総合指数は反落する展開になった。5月米製造業・サービス部門PMI速報値が予想を上回ったことが分かると、景気敏感株を中心に買いが優勢になった。上げ幅は一時330ドルを超えた。ただ、中国政府が採掘取締りをあらためて表明したことを背景に、暗号通貨相場が再び急反落すると、警戒感に一時上げ幅を縮めた。しかし、インフラ計画を巡りパイデン政権が引き続き共和党との超党派での合意求め妥協案を提示すると回復期待感からNYダウは終日堅調推移となった。一方、住宅価格の上昇を受けてインフレ懸念が再燃し、ハイテク株は下落に転じた。一方、5月米製造業・サービス部門購買担当者景気指数(PMI)速報値が予想を上回ったことや、米連邦準備理事会(FRB)当局者からテーパリングの討議開始時期に関する発言が伝わったものの、債券相場への影響は限られた。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、以前と比べて三指数ともかなり割高感が残っており、リスク回避の材料が出ると下落しやすい。
感染拡大が縮小することや新型コロナウイルスのワクチン・治療薬の投与が世界的に普及するなど、終息の方向が出るまでは不安定な市場が続きやすい。しかし、追加経済対策期待や経済活動再開で先行きの景気回復の期待感が株価を押し上げている。米FRBが長期金利の上昇に懸念を示すまでは上昇基調が続く可能性があり、株価の下押し要因となりやすい。VIX指数は20.67から20.15へわずかに低下した。VIX指数が再び20を超えていることから、市場が不安定な動きになりやすいので注意が必要である。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。
そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.298%
・直近イールドスプレッド縮小:19/4/25-▲3.048%、20/09/1‐▲2.867%
20/10/12-▲2.847%、21/1/11-▲2.611%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・5月20日:▲2.860%⇒5月21日:予想▲2.854%(前日比で縮小:割高)
5月20日のNYダウは続伸した一方で、米長期金利がわずかに低下したもののイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲3.298%から▲0.444%と平均値より下方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.372%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.248%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.687%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.163%下回った。NYダウは、上昇してスタートしたものの、ビットコインの下落を受けてハイテク株が下落した。金融、公益、資本財が上昇した一方、一般消費財、IT、コミュニケーションが下落した。NYダウ平均は123.69ドル高(+0.36%)と2日続伸した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.769%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・5月20日:▲2.774%⇒5月21日:予想▲2.787%(前日比で拡大:割安)
S&P500は反落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.769%から+0.018%と平均値より上方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.082%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.215%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.392%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.712%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.435%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.780%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、20/12/4-1.351%
21/1/11-1.066%、21/2/16-1.144%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・5月20日:▲1.493%⇒5月21日予想▲1.518%(前日比で拡大:割安)
NASDAQは反落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は割安)した。平均値の▲1.780%から▲0.262%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.661%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲0.865%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲0.980%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.285%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.576%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が低下したうえ、株価も反落したことで拡大した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.5%台前半まで縮小して推移している。そのため、割高感が続いていることから、ネガティブなニュースが出ると引き続き下落しやすい地合いが続いている。また、2%台まで拡大するまでは割安とは言えない。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。