★NY株式市場では、NYダウとS&P500指数は続伸したものの、ナスダック総合指数は反落する展開となった。米追加経済対策が成立したことで、景気回復が勢いづくとの期待から幅広い銘柄に買いが入った。また、バイデン大統領は11日夜の演説で5月1日までにワクチン接種の対象を全成人に拡大すると発言したことで、新型コロナウイルスのワクチン普及が加速し、経済の正常化が進むとの見方も強まった。なお、米国でのワクチン接種は1億回を超えた。一方、ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は反落した。景気の回復期待に米長期金利の上昇を受けて高PER(株価収益率)のハイテク株への売りが優勢だった。一方米長期金利は、米追加経済対策の成立と新型コロナウイルスのワクチン普及で、景気回復が早まるとの見方から相対的に安全資産とされる米国債には売り(利回りは上昇)が広がった。10年債利回りは一時1.6405%前後と昨年2月以来約1年1カ月ぶりの高水準を付けた。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、以前と比べて三指数ともかなり割高感が残っており、リスク回避の材料が出ると下落しやすい。
感染拡大が縮小することや新型コロナウイルスのワクチン・治療薬の投与で有効性が実証されるなど、終息の方向が出るまでは不安定な市場が続きやすい。しかし、追加経済対策期待や経済活動再開で先行きの景気回復の期待感が株価を押し上げている。ただ、米長期金利の上昇が止まらないことから、市場に警戒感が強まっている。米FRBが長期金利の上昇に懸念を示すまでは上昇基調が続く可能性があり、株価の下押し要因となりやすい。VIX指数は21.91から20.69へ低下した。VIX指数は20半ばまで低下してきたが、20を割れるまでは不安定な動きが継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。
そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.309%
・直近イールドスプレッド縮小:19/4/25-▲3.048%、20/09/1‐▲2.867%
20/10/12-▲2.847%、21/1/11-▲2.611%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・3月11日:▲2.774%⇒3月12日:予想▲2.645%(前日比で縮小:割高)
3月12日のNYダウは続伸したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲3.309%から▲0.664%と平均値より下方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.581%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.457%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.896%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.372%下回った。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.773%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・3月11日:▲2.685%⇒3月12日:予想▲2.591%(前日比で縮小:割高)
S&P500は続伸したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲2.773%から▲0.182%と平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.278%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.411%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.588%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.908%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.631%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.790%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、20/12/4-1.351%
21/1/11-1.066%、21/2/16-1.144%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・3月11日:▲1.292%⇒3月12日予想▲1.218%(前日比で縮小:割高)
NASDAQは反落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲1.790%から▲0.572%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.961%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲1.165%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.280%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.585%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.876%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が上昇した一方で、株価は反落したものの縮小した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.2%台前半まで縮小して推移している。そのため、割高感が続いていることから、ネガティブなニュースが出ると引き続き下落しやすい地合いが続いている。また、2%台まで拡大するまでは割安とは言えない。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。