この記事はフジトミ証券所属のCFP(1級FP技能士)の岩井が作成しました。
ロシアへの経済制裁が商品(コモディティ)相場に与える影響について分かりやすく説明しています。
IEA加盟国の石油備蓄の放出が決まりました。放出される量は、加盟国合計で1億2000万バレルです。この量の石油を半年掛けて放出していきます。
各加盟国が受け持つ放出量はすでに決まっており、日本は全体の12.5%に相当する1,500万バレルを放出することになりました。
各国の放出量は次の通りです。
IEA加盟国の石油備蓄放出量
放出量(キロバレル/日) | |
アメリカ | 60,559 |
日本 | 15,000 |
韓国 | 7,230 |
ドイツ | 6,480 |
フランス | 6,047 |
イタリア | 5,000 |
イギリス | 4,408 |
スペイン | 4,000 |
トルコ | 3,060 |
ポーランド | 2,298 |
その他 | 5,918 |
合計 | 120,000 |
出典:IMF
盟国の中で最も多くの石油を放出するのがアメリカです。全体の半分に相当する6000万バレル以上を放出します。2番目に放出量が多いのは日本です。
今回の排出決定に加えて、今後更なる需給ひっ迫に陥った時の負担が増えないか不安になります。各国が協調して石油備蓄を放出する訳ですが、その中には産油国が入っていることにお気づきでしょうか。
アメリカは世界最大の産油国であり、イギリスはブレント原油を産出する海底油田を保有しています。
2020年にBP社が発表したデータですが、アメリカは1647万バレル/日、イギリスは103万バレル/日の原油を生産しています。アメリが6056万バレル、イギリスが441万バレルの原油を放出しても、その量は、自国生産量の数日分程度でしかありません。
ロシアを取り巻く問題が今後更に悪化し、エネルギー供給が長期的に滞るようなことになると、油田を持つ国と持たざる国との間で更なるギャップが生まれる可能性が高まってしまいます。
なお、日本が保有する石油備蓄は次のとおりです。
石油備蓄の現況
国家備蓄 | 原油 | 2.9億バレル |
石油製品 | 0.09億バレル | |
民間備蓄 | 原油 | 0.7億バレル |
石油製品 | 1.0億バレル | |
産油国共同備蓄 | 原油 | 0.06億バレル |
合計 | 4.7億バレル |
出典:資源エネルギー庁
今回日本が放出するは、1500万バレルなので全体の3%ほど放出することになります。今回の放出は高騰する原油価格への対応が主な目的だと考えられますが、この状態が中長期で続いていけば、エネルギー供給のバランスが崩れてしまい、お金を出しても買えない状況に発展しかねません。
私達の生活に欠かせない原油。今後どうなっていくでしょうね。
ドバイ原油チャート
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また、売買を推奨するものでもありません。ご了承ください。
参考文献
・IEA