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○○が無いなら△△すればいいじゃない

2022.06.01

イメージ:たまねぎ

この記事はフジトミ証券所属のCFP(1級FP技能士)の岩井が作成しました。

パンが無いならケーキを食べればいいじゃない。

これは、フランス革命前、庶民が食べるパンが無い事を知ったマリー・アントワネット王妃が発したとされている言葉です。(実際にはそのような記録は無いそうですが…)
今から200年以上前のフランスの食料事情を良く表現した言葉として伝わっていますが、単なる昔の逸話として片づけられない状況になってきていると感じます。

今年は「たまねぎ」の価格が高いことをご存じですか?
5月9日時点でたまねぎ価格は1kgあたり581円まで上昇しました。たまねぎの大玉1つが300グラム程度なので1玉174円ほどで売られています。

昨年と比べ倍以上の値段になってしまいました。
原因は、昨年夏、北海道を襲った記録的な干ばつです。100年に1度のレベルとされる干ばつの影響で、たまねぎの収穫量が大幅に減少しました。国内生産量の60%を占める北海道を襲った自然災害が、現在の価格高騰を招いたわけです。

たまねぎと言うと、カレー、シチュー、ハンバーグ、肉じゃがなど、子供が好きな料理には必ず入っている印象です。たまねぎ価格の高騰は家計の負担増になり、気軽に家庭で利用できなくなりそうです。

たまねぎが高いのならば他の野菜を使えばいいじゃない。

普段あまり料理をしない人はそんな発言(失言?)をしてしまいそうですが、たまねぎにはたまねぎにしか出せない味があるので、他の野菜で代用できるものでもありません。

さらに今後は他の野菜価格も上昇する可能性がでてきました。その理由として挙げられるのが、肥料価格の高騰です。

全国農業協同組合連合会(JA全農)は、6月から10月の肥料価格を大幅に引き上げることを決定しました。

令和4肥料年度秋肥(6~10月)価格

分 類 品 目 成 分
(%)
前期比
(春肥対比)
単肥 窒素質 尿素(輸入・大粒) 46 +94%
尿素(国産・細粒) 46 +73%
硫安(粉) 21 +45%
りん酸質 過石 17 +25%
重焼りん 35 +25%
加里質 塩化加里 60 +80%
けい酸加里 20 +36%
複合肥料 高度化成(基準) 15-15-15 +55%

出典:全国農業協同組合連合会HP

窒素質が45%~94%、りん酸質が25%、加里質が36%~80%引き上げられます。

肥料価格の上昇には、ロシアのウクライナ侵攻が関係しています。
ロシアとベラルーシはリン鉱石や加里鉱石の産出国のひとつでしたが、両国からの輸出が停滞したことによって、代替産地へのニーズが集中し、世界的に価格が高騰してしまいました。

ロシアが生産していた品目については、「ロシアへの経済制裁と商品先物相場」をご覧ください。

今起きている、色々な品目の価格上昇は、今後の食料危機について考えさせられる問題です。

日本の食料自給率が低いことは良く知られていますが、実際に何%くらいなのかご存じですか?

食料自給率問題

我が国と諸外国の食料自給率

グラフ:我が国と諸外国の食料自給率
出典:農林水産省HPより(https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/013.html

日本の食料自給率は、カロリーベースで37%、生産額ベースで67%です。どちらで計算しても100%に満たないので日本の食料は外国から輸入することで維持されています。
言い方を変えれば、海外から買ってきたものを食べないと生きていけない状態です。

世界が平和で、食料の生産→流通→消費の流れに何の支障もないのであれば問題ありませんが、戦争や紛争によりその流れが寸断されてしまうと状況が変わってしまいます。

人々が主食として食べている穀物ではどうでしょう。

諸外国の穀物自給率

表:諸外国の穀物自給率
出典:農林水産省HPより(https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/013.html

現在、日本の穀物自給率は28%ですので、日本国内で消費される穀物の72%は輸入に頼っています。

日本以外の国はどうなっているのでしょうか。

世界172ヶ国中、自給率が100%以上なのは38ヶ国だけで、残りの134ヶ国は穀物を輸入することで成り立っています。ランキング下位の国を見ると自給率が0%の国がいくつも存在します。これらの国では自国で穀物を生産していないので、外国から輸入しなければ生活できません。

注意すべき点は、ランキング4位にウクライナ、11位にロシア連邦がいることです。
ウクライナの穀物自給率は245%、ロシア連邦の穀物自給率は184%なので、どちらも巨大な穀物輸出国です。それぞれの人口から算出するとウクライナは6030万人分、ロシアは1億2180万人分の余剰があります。合計1億8210万人分の穀物が流通しなくなることは、世界で餓死する人がでてくる深刻な食料危機に発展しかねません。

食料が無いんだったら買ってくればいいじゃない。

そんな単純な問題ではありません。
日本のような先進国は世界中にコネクションを持っているので流通経路を確保しやすいのですが、発展途上国で自給率が低い国にとって現在の状態は、国民の生死に発展しかねない大きな問題です。

本格的な食料危機がやってくるのは、北半球で穀物の収穫期を迎える2022年秋ごろだと思います。
それまでに平和への糸口を見つけて欲しいと願うばかりです。

このコメントは編集者の個人的な見解であり、内容を保証するものではありません。
また、売買を推奨するものでもありません。ご了承ください。

参考文献

世界の食料自給率-農林水産省
ケーキを食べればいいじゃない-Wikipedia
令和4肥料年度秋肥(6~10月)の肥料価格について-全国農業協同組合連合会
食品価格動向調査(野菜)-農林水産省

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