このページは、原油取引や原油の価格変動に興味があるけれど、取引を行ったことがない方を対象に作成しました。原油先物取引の仕組みなど極力専門用語を用いずに作成しています。少しでも原油先物取引に関する疑問が解消できれば幸いです。
1.原油に投資するにはどうすればできるの?
原油取引をやってみたいと思っていてもどこでどうやって購入すればいいのか。やり方がよく解らないというお問い合わせをいただくことがよくあります。
今回は原油先物取引の売買の仕方について簡単に説明させていただきます。
例えば株式投資であれば、株券を購入するところから取引がスタートします。 上場している株式は、証券取引所で売買されていますので株が欲しい方は証券取引所で株式を売買すれば良い訳ですが、証券取引所に直接訪れて株券を買いたいと言っても購入することはできません。
証券取引所で株式の売買ができるのは、証券取引所の会員に限られているので、通常、会員である証券会社を通じておこないます。
原油の先物取引は「証券取引所」ではなく「商品取引所」という公的な取引所でおこなわれています。日本では東京商品取引所で取引されていますが、株式と同じで、一般の方が商品取引所に行って原油を買いたいと言っても売買することはできません。
原油先物取引を売買するためには「フジトミ証券」のような商品先物取引業者を通じて、おこなう必要があります。
2.先物取引ってどんな取引なの?
東京商品取引所で取引されている取引は「先物取引」であり「現物取引」ではありません。現物取引とは現物のやり取りが伴う取引です。豊洲市場などの中央卸売市場では魚、野菜、肉などが売買されています。売買の対象はマグロやキャベツなどといった本物の魚や野菜です。現物のやり取りが伴う取引なので「現物取引」に分類されます。
東京証券取引所でおこなわれている株式の売買は、中央卸売市場同様、現物を伴う取引です。たとえば、ある会社の株式を100株購入するとその100株は購入したお客様ものになります。現在、株式はすべて電子化されているので現物取引をイメージしにくいですが、株式の持ち主(株主)は購入した人に代わります。現物を伴う取引だから「現物取引」と言うわけです。
では、「先物取引」とはどのような取引なのか。その字のごとく、将来(先)の値段を現時点で決めて後で物のやり取りをおこなう取引になります。
例えば1年後、「あるもの」を1万円で購入する契約を結んだとします。1年後、その「あるもの」の価格が1万5000円に上昇していたとしても、すでに1万円で購入する契約を結んでいますので、1万円払えば「あるもの」が購入できます。逆に「あるもの」の価値が5000円に値下がりしてしまった場合は、すでに1万円で購入する契約を結んでいますので1万円支払って購入しなければなりません。
東京商品取引所の原油取引は、「先物取引」なので、将来の原油価格を今決める取引ということです。
3.先物取引の将来っていつのこと?
先ほど原油の先物取引とは「将来の原油価格を今決める取引」と説明しましたが、その将来がいつなのかはすでに決まっています。東京商品取引所のホームページやフジトミ証券のホームページをみると「23/07」や「24/09」など15つの日付があることにお気づきでしょうか(※2023年7月現在)。
これが取引の期限を表していて専門用語で「限月(げんげつ)」と言います。 例えば「23/07」であれば、2023年7月の最終営業日である2023年7月31日が取引の期限になります。原油は連続15限月制という限月構成になっていますので、最長で約1年3ヶ月間取引できる期間があります。2024年9月限を取引したとすると2024年9月30日が最終営業日であり、その日の価格を先に決めてしまう取引になります。
4.原油を買ったら原油が届くの?
先物取引は「将来の価格を先に決める取引」で、その対象となる日付を「限月(げんげつ)」と言うことを確認しました。それでは取引終了日を迎えたらどうなってしまうのか。 原油の先物取引は「現金決済先物取引(げんきんけっさいさきものとりひき)」と呼ばれる取引です。 現金決済先物取引は、あらかじめ成立した値段と最終的に指定された値段との差額を計算し、現金のやりとりで取引が終了になります。取引期限を迎えた取引は最終的に現金で決済するので「現金決済先物取引」と言います。 原油先物取引をおこなったから、現物の原油を購入しなければならない訳ではありませんので、現物が届く心配をせず取引することができます。
5.最終決済日まで持っていなければならないの?
原油先物取引の決済方法には2つのやり方があります。
1.取引最終日まで何もしない
1つ目が先ほどみた取引終了日まで何もしないという方法です。
原油先物取引は「現金決済先物取引」ですので最終決済価格(さいしゅうけっさいかかく)である68,000円と契約した65,000円との差額である3,000円が利益になります。
逆に原油価格が62,000円に値下がりしてしまった時は62,000円の価値のものに65,000円支払わなければなりません。3,000円高く買わなければならなくなってしまいます。最終決済価格である62,000円と契約した65,000円の差額である3,000円が損失になります。
2.反対売買する。
2つ目が途中で転売する方法です。
12月が期限の取引を始めたからと言って12月まで取引する必要はありません。原油価格は日々変動していますので好きなタイミングで転売することができます。これを「反対売買(はんたいばいばい)」と言います。
23年12月が期限の原油先物取引を半年前の7月に65,000円で買い、その1ヵ月後、原油価格が70,000円に値上がりしていたとします。この時、70,000円で転売して取引を終了することができれば、差額である5,000円が利益になります。
逆に原油価格が61,000円に値下がりしてしまった時に、転売して取引を終了したとすると差額である4,000円が損失になります。
6.取引単位はどうなっているの?
先ほどの例では1キロリットルあたりで計算しましたが、実際の取引は50キロリットルを取引単位としておこなわれています。この50キロリットルの1セットを「1枚」と数えます。株式でいう100株が「1口」のイメージです。
仮に1キロリットルが65,000円だったとすると
65,000円 × 50キロリットル
= 3,250,000円(総取引金額)
通常、1キロリットルあたり65,000円する原油を50キロリットル購入した際に掛かる金額は、65,000円に50キロリットルを掛けた325万円です。現物取引であれば325万円の資金が必要です。この金額を総取引金額(そうとりひききんがく)と言います。
7.原油を1枚買うにはいくら必要なの?
1キロリットル65,000円の原油を50キロリットル分購入する際に必要な金額は325万円です。
ところが原油先物取引は「先物取引」なので現物のやり取りを伴う取引ではありません。
取引の内容は「12月に65,000円で原油を買う。」という約束事なので取引の際に必要なのは、その取引の証拠となる資金である証拠金になります。
= 3,250,000円 (総取引金額)
⇒ 364,000円 (証拠金)※
※2023年7月11日現在
※証拠金は毎週変更されます。最新の証拠金はフジトミ証券のホームページにてご確認ください。
8.原油価格が変動する理由ってなに?
株式相場、為替相場、不動産価格、野菜の価格など日々値段が変動する相場はいくつも存在しますが、基本的にそれらの価格は売り手と買い手のパワーバランス(需給バランス)で決まっています。
供給量よりも需要の方が多ければ価格は上昇し、逆に供給量が大量で需要が少ない場合は価格が下落します。
供給 > 需要 価格は下降しやすい傾向にあります
OPECが発表した現在のエネルギー需要はご覧のようになっています。
コロナショックで減少したエネルギー需要は着々と回復傾向です。
9.原油はどんなところが供給しているの?
地球上で原油が取れる場所はある程度決まっています。どこでも取れるという訳ではありません。
原油が取れる場所を大きく分けるとOPEC(石油輸出国機構)プラスと非OPECプラス(OPECプラス以外のアメリカ・カナダ・中国など)に分けることができます。2021年現在、世界中で使われている原油の約54%がOPECプラスから供給されて、約46%がOPECプラスに加盟していないアメリカやカナダなどから供給されています。
2021年現在の産油国はご覧のとおりです。
※出典:(今日の石油産業2022)
2021年現在、原油の生産量がもっとも多い国はアメリカの1,649万バレル/日、2番目がロシアで1,068万バレル/日、3番目がサウジアラビアで1,060万バレル/日となっています。産油国を取り巻く環境 の変化は原油市場の大きな変動要因になっています。
アメリカ合衆国は2008年まで原油の産出量は減少傾向にありました。しかしハイドロ・フラクチャリング(通称フラッキング)と呼ばれる水圧粉砕法技術の開発によって、それまでは困難であったシェール層からの原油や天然ガスの抽出が可能となりました。
2009年からは原油の産出量が増加に転じ、2011年以降に増加の速度が速まり、 2017年には世界最大の原油産出国となりました。
それまでの原油の産出量は、サウジアラビアとロシアが世界トップ2でしたが、 現在ではアメリカ合衆国が頭一つ抜け出しています。
これまでの原油価格の変動はご覧のようになっています。
プラッツドバイ原油
上グラフは東京で取引されているドバイ原油価格の推移を表しています。日本で取引されていますので、円で取引されています。
ご覧のように2000年以降、価格が大きく下落した時期は今回を含め3回ありました。
1回目が2008年の後半に掛けてです。この年リーマン・ブラザーズが倒産し、世界的な景気減速が、エネルギー資源である原油の需要を減少させました。
その後は、景気経済の回復とともに世界の原油消費量も増加したため再び価格は上昇しはじめています。
2回目に大きく下げたのが2014年後半に掛けてです。
この2014年、世界の原油を取り巻く環境に変化が生じました。それがシェールオイルの実用化です。
2014年以降、北米大陸中心にシェールオイルの生産が本格化しました。別名シェール革命とも呼ばれています。
今まで開発が困難とされていたシェール(頁岩(けつがん)層に含まれる非在来型の石油や天然ガスの採掘が可能になりました。
特にアメリカ、カナダで生産されるシェールオイルの量は凄まじく、アメリカは世界1番目、カナダは世界4番目の生産量と年々シェアを拡大してきています。
そして3回目が2020年3月、新型コロナウイルスによる需要後退やOPECとロシアなど非OPECによる協調減産協議決裂により、大幅安を引き起こしました。
― 供給面 ―
・OPECや非OPECの生産動向
・産油国の政情不安、地政学的リスク(テロなど)
・シェールオイルの生産状況
・米国の在庫状況
― 需要面 ―
・原油消費国の景気動向
・米国、中国の景気・需要動向
― その他 ―
・ロシア・ウクライナ情勢の懸念
・株式市場の動向
10.先物取引はハイリスク・ハイリターンなの?
通常、原油価格の変動はそれほど激しいものではありません。株式のように価格が5倍、10倍になるなんてことは滅多なことにはおきません。下の図は原油価格が1キロリットルあたり4,000円変動した時のイメージ図です。
<現物取引をおこなったイメージ>
現物取引であればそれほど大きな価格変動ではないことが解ります。
ところが、原油先物取引は証拠金取引ですので下の図の青枠で囲まれた部分だけあれば取引することができます。
現物取引で325万円規模の取引を364,000円(※)の証拠金で取引できるということは、少しの価格変動が大きな利益や損失になってしまいます。(※2023年7月11日現在)
例えば、65,000円で買った原油価格が4,000円値上がりし69,000円になったとすると、値上がり幅4,000円に50キロリットルを掛けた200,000円が利益になります。
現物取引の場合、50キロリットルの原油を購入するには、65,000円を50倍した325万円必要ですが、先物取引は証拠金取引なので証拠金364,000円に対して200,000円の利益が生まれるのでとても資金効率がよい取引だと言えます。
ただし、取引には注意が必要です。思惑が外れてマイナスになった時のことです。
思惑が外れ、マイナスになった際は大きなマイナスになります。65,000円で購入した原油価格が61,000円に値下がりしてしまった場合、現物取引では325万円が305万円になってしまいますので20万円のマイナスですが、先物取引でも同様に20万円のマイナスになってしまいます。
上記の値動きの幅は、総取引金額に対して6%程度ですが、証拠金取引である364,000円から見れば、証拠金に対して大きな変動になります。
原油先物取引の結果が思惑どおりにいった際は、大きな利益になりますが、思惑どおりに行かなかった際は大きな損失になってしまいますのでリスク管理には細心の注意が必要です。
11.始める前に注意して欲しいこと
原油の先物取引を始める前に意識して欲しいことが2つあります。
・証拠金取引なのでリスクが大きいこと
・限月があるので最終決済日までに決済する必要があること
原油価格の変動は、エネルギー関連銘柄中心に株価への影響や消費者物価指数など様々な経済指標への影響力を持っています。株式を主軸に資産運用している方も原油をポートフォリオに組み込むことで、リスクを調整した投資も可能です。
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