この記事はフジトミ証券所属のCFP(1級FP技能士)の岩井が作成しました。
イスラエル軍とハマスとの間で行われている争いによって中東情勢の緊張度が高まったことを受け、商品先物市場の動きも活発になってきています。
日本から9,000km以上離れた場所で起きている争いですが、日本は国内で消費されるエネルギーのほとんどを中東からの輸入に依存していますので他人事とは言えない問題です。
今起きているこの問題がエネルギー供給にどのような影響を及ぼすのか。地理的位置関係から考えてみたいと思います。
今回衝突が起きているイスラエルのガザ地区は、地中海東岸に位置しています。
イスラエルが面しているのは地中海なので、船舶の運航に影響を及ぼす可能性が高いのは、スエズ運河を通って紅海を抜けるルートです。スエズ運河は地中海と紅海を結ぶ運河でエジプト政府が運営しています。今回の争いにエジプトが関係してくるようになると、地中海地域との物流にも影響がでてくるかもしれません。
日本のエネルギー輸入元について
原油輸入量(2022年)
出典:今日の石油産業2023(石油連盟)
日本は年間1億5656万キロリットルの原油を輸入していますが、そのうち95.2%を中東に頼っています。輸入量の多い順に並べるとサウジアラビアの39.2%、UAE(アラブ首長国連邦)の38.5%、クウェートの8.5%、カタールの6.5%、オマーンの1.1%、バーレーンの1.0%でした。
日本の原油輸入量の多い6カ国に共通するのは、その位置です。
6カ国とも中東の国ですが、いずれもペルシャ湾岸地域に面しています。日本は、ペルシャ湾に面した地域からタンカーで原油を輸入しています。
「中東情勢が緊迫」というニュースをみると原油供給への影響を心配してしまいますが、現在衝突している地域と日本のエネルギー供給経路は離れていますので、すぐに供給が止まってしまうということは考えられません。
この先、ペルシャ湾に面したイランやサウジアラビアがどのような対応を取るのかが重要になってくると思います。
10月7日(土)、ハマスによるイスラエル に向けた大規模攻撃が実施されましたが、その後の原油相場は次のように変動しました。
WTI原油
(出所:TradingViewによる原油チャート)
大規模攻撃が実施されたのが土曜日だったこともあり、週明けのエネルギー相場は上昇してのスタートとなりましたが、13日には先週と同じ水準まで戻ってしまいした。原油相場への影響は限定的だとマーケットが判断したものだと考えられます。
金(Gold)
(出所:TradingViewによる金チャート)
ハマスによる大規模攻撃が実施されてから10日が経過しましたが、金相場は上昇し続けています。「有事の金」という言葉どおりの値動きになっています。大阪取引所で取引されている金先物は10月18日、9,300円台まで上昇しています。
今後のイスラエル情勢がどのように変化していくのか不透明な状況ですが、簡単に解決できる問題ではありませんので、現在のトレンドはしばらく継続するかもしれません。
このコメントは編集者の個人的な見解であり、内容を保証するものではありません。
また、売買を推奨するものでもありません。ご了承ください。
参考文献
・石油連盟