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戦略石油備蓄の放出

2021年11月24日

皆さま、おはようございます。CFP(ファイナンシャルプランナー)のワイワイこと岩井です。

ブルームバーグやロイターでもトップニュースとして報道されましたが、アメリカ、日本、中国、インド、韓国、英国などが協調し、戦略石油備蓄を放出することを発表しました。

主要な石油消費国が協調して石油備蓄を放出するのは今回が初めてです。

エネルギー産業に従事している人や原油先物を取引している人以外は、「石油備蓄」という用語は初めて聞く言葉かもしれません。

石油備蓄とは、大きな価格変動や戦争などによって石油供給が滞る非常事態に備えて、通常の国内消費を賄うために必要な量の石油を蓄えておく制度で、日本では「石油の備蓄の確保等に関する法律」という法律により定められています。

エネルギー自給率がわずか9.6%(2017年)に過ぎない日本では、消費するエネルギーの80%以上を石油や石炭、天然ガスといった化石燃料に頼っています。

そして石油などの原料となる原油については、そのほとんどを中東から輸入していますが、その輸送方法は石油タンカーによるものです。タンカーの輸送ルートはほぼ決まっており、ホルムズ海峡を通り、マラッカ海峡を経て日本にやってきます。

海賊の多いホルムズ海峡や南シナ海に繋がるマラッカ海峡を通らなければ日本まで原油を輸送することができないので、それらの海域で事故や紛争が発生した際には、日本への石油供給は滞ってしまい、国民生活に大きな影響が出てしまいます。
そのような非常事態に備えて備蓄されてきた石油が、今回放出されることになりました。

現在の日本の石油備蓄は資源エネルギー庁のホームページで確認できます。
9月末時点での日本の石油備蓄は次の通りです。

国家備蓄     145日分 製品換算 4,461万kl 保有量 原油4,545万kl 製品143万kl
民間備蓄     90日分  製品換算 2,773万kl 保有量 原油1,142万kl 製品1,688kl
産油国共同備蓄 6日分 製品換算 191万kl 保有量 原油201万kl
合計         242日分 製品換算 7,425万kl

国家備蓄のほとんどは原油のまま備蓄されており、民間備蓄の半分以上は製品で備蓄されています。

備蓄されている量には決まりがあります。
国家備蓄は、輸入量の90日分程度を下回らない量とされています。
民間備蓄は、消費量の70日分とされています。

国家備蓄が輸入量、民間備蓄が消費量と、ベースとなる量が違いますが、必要とされている日数を上回る量の備蓄が確保されていますので、今回発表された、国内需要の1~2日分に相当する放出量程度では、備蓄在庫の減少が問題になることはなさそうですね。

今回石油備蓄の協調放出が報道された6ヶ国はいずれも北半球に位置する国でこれから冬本番を迎えます。寒さが強まり、クリスマスから年越しに掛けて暖房用途での需要が高まる中、この放出でエネルギー価格の上昇を抑え、安定した供給を確保できるのか。

しばらくはエネルギーの需給に注目したいですね。

このコメントは編集者の個人的な見解であり、内容を保証するものではありません。また、売買を推奨するものでもありません。ご了承ください。


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