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お金に関する“もんだい”

2021年11月12日

皆さま、おはようございます。CFP(ファイナンシャルプランナー)のワイワイこと岩井です。

突然ですが、問題です。
次のグラフは何の変動を表しているでしょうか?

出典:OECD

ヒント:赤い線が日本です。

答えは2000年を100とした各国の平均年収の推移です。

この20年間で国民の収入が増えた国と増えなかった国が、先進国の中ではっきりと分かれてしまいました。

1.収入が増えなかった国

日本・・・100.39
イタリア・・・96.41
日本とイタリアの国民の収入は残念ながら増えませんでした。この20年間ほぼ変わっていません。

2.収入が順調に増えた国

カナダ・・・125.47
フランス・・・117.53
ドイツ・・・117.9
英国・・・117.26
オーストラリア・・・122.13
カナダ、フランス、ドイツ、英国、オーストラリア国民の収入は順調に増えました。
この5ヶ国の値は、20年間で約20%増加しています。単年では1%前後の増加です。

3.収入がとても増えた国

アメリカ・・・178.07
韓国・・・143.51
この20年間で著しく収入が増えたのがアメリカと韓国です。
アメリカは20年間で1.8倍弱、韓国は1.4倍強へ、国民の収入が増えました。

さらに分かりやすい様に2000年と2020年の所得だけを比較してみます。

平均所得-USドル建て

出典:OECD

青い棒グラフが2000年時点での平均所得、オレンジの棒グラフが2020年時点での平均所得です。20年前は、アメリカの平均所得はこの9ヶ国の中で6番目に位置しており、日本やイタリアとあまり変わらないレベルでした。それがこの20年間で国民の平均所得の大幅増加に成功しています。ちなみに日本の平均所得は韓国に抜かれて8番目です。

どうしてこのようなギャップが生まれてしまったのでしょうか。

可能性①:平均年齢

この20年間で所得が増えなかった日本とイタリアに共通しているのが国民の平均年齢の高さです。
2000年時点での日本の中位年齢は48.9歳、イタリアの中位年齢は47.8歳とすでに高齢化していましたが、これが原因なのでしょうか。

所得が増えた(=成長した)国ではどうでしょう。
「順調に増えた国」のドイツ、フランス、カナダ、イギリスの中位年齢はいずれも40歳を超えていますし、「とても増えた国」の韓国の中位年齢は43.1歳なので、年齢だけが原因という訳ではなさそうです。なお、アメリカの中位年齢は38.6歳でした。

可能性②:生産年齢人口

15歳から64歳の人口を生産年齢人口と言います。この年齢の人口は20年間でどう変化したのでしょうか。2000年と2020年のデータを比較します。

生産年齢人口

出典:(独)労働政策研究・研修機構

生産年齢人口が減少したのは日本とドイツだけです。特に日本は20年間で1219万人も減ってしまいました。これは2000年のオーストラリアの生産年齢人口に匹敵するボリュームです。逆に激増したのがアメリカです。元々生産年齢人口は多かった訳ですが、この20年間で2931万人も増加しました。カナダ1ヶ国分よりも多い人数の増加です。

可能性③:労働時間

2019年の日本人の年間労働時間は1644時間、イタリア人の年間労働時間は1715時間でした。(日本人よりもイタリア人のほうが長時間働いているという事実を知って驚くのは私だけでしょうか!)両国ともに20年前よりも平均所得が増えていませんが、労働時間もOECD平均の1743時間よりも短くなっています。
ドイツでは労働時間法で原則1日8時間を超えて働いてはならないと決められているため、OECD調査対象国のなかで最も短い労働時間でした。日本よりも約20%以上短い1383時間しか働いていません。ドイツほどではありませんが、英国とフランスもどちらかと言えば労働時間が短いほうの国です。
逆に長時間働いているのが、韓国とアメリカです。韓国は1967時間、アメリカは1777時間も働いています。冒頭で確認しましたが、この2つの国はものすごく平均収入を伸ばすことに成功した国です。

ここまでの条件で見ると、ドイツは、平均年齢が高く、生産年齢人口も減少し、短時間しか働かないのに20年間で117.9%平均所得を伸ばしています。また、韓国やアメリカのように長時間働いている国もあります。
皮肉にもどっち付かずの国の所得が伸び悩んでいるようです。

可能性④:世界的大企業の存在

2021年9月にBloombergが発表した「世界の時価総額トップ10」はご覧の10社でした。

1. アップル(アメリカ)
2. マクロソフト(アメリカ)
3. アルファベット(アメリカ)
4. サウジアラムコ(サウジアラビア)
5. アマゾン・ドット・コム(アメリカ)
6. フェイスブック(アメリカ)
7. テスラ(アメリカ)
8. バークシャー・ハサウェイ(アメリカ)
9. 台湾積体電路製造(台湾)
10. エヌビディア(アメリカ)

10社中8社がアメリカの企業です。残念ながら日本の企業は1社もありませんでした。
大企業は多くの利潤を生みだし、多くの雇用を生み出します。世界の時価総額ランキングの上位のほとんどがアメリカ企業であることは、アメリカ人の平均所得の引き上げに大きく関係していそうです。

この20年間、国民の平均収入が増えなかった日本。この状態が今後も続いていくと、諸外国とのギャップはより大きなものになり、日本だけが取り残されてしまう可能性が高まってしまいます。

今後の日本が成長していくには何かを変えなければならないのかもしれませんね。

このコメントは編集者の個人的な見解であり、内容を保証するものではありません。また、売買を推奨するものでもありません。ご了承ください。


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