米国の貿易がどうなっているのかを見てみる。
2018年03月15日
皆さん、おはようございます。ファイナンシャルプランナーのワイワイです。
14日付けロイターのニュースですがトランプ政権が中国に対して米貿易黒字1000億ドルを削減するよう求めているとのニュースがありました。
米、中国に貿易黒字1000億ドルの削減を求める=ホワイトハウス(ロイター)
https://jp.reuters.com/article/usa-trade-whitehouse-0314-idJPKCN1GQ2AP
貿易黒字1000億ドルと言われてもピンときませんが日本円で換算(1ドル=106円で計算)すると10兆6000億円です。
どうしてこんなにもアメリカは貿易赤字が拡大してしまうのでしょうか。
今日はアメリカの貿易について見てみたいと思います。
まず今回問題視されている中国との関係についてです。
2016年のアメリカ対中国輸出額は1156億ドルだったのに対し輸入額は4626億ドルでした。輸出から輸入を引いた貿易赤字額は3470億ドルです。
トランプ大統領が言う貿易黒字額1000億ドルの削減だけ考えると無茶振りな気もしますが、実際の貿易黒字額をみると3470億ドルもありますので28%改善することができれば達成できる金額です。
例えば中国への輸出額を500億ドル増加させ、輸入額を500億ドル減少させることができれば差し引き1000億ドルの改善になりますがそんなことできるのでしょうか。
もう少し具体的にみてみます。
アメリカの輸出金額の内訳を見ると高額な順に工業用原材料、消費財、自動車部品等の順に並びます。
この3項目の輸出額と輸入額を表にしたものが次のものです。
表1.米国の貿易主要3品目(2016年)
輸出 | 輸入 | 収支 | |
工業用原材料 | 3964 | 4433 | -469 |
消費財 | 1503 | 5835 | -4332 |
自動車部品等 | 1305 | 3501 | -2196 |
(単位:1億ドル)
輸出金額が大きい3品目ですら輸入超過な状況です!
それ以外の品目ではどうでしょうか。
表2.米国の貿易主要3品目を除いた品(2016年)
輸出 | 輸入 | 収支 | |
民間航空機 | 606 | 138 | 468 |
半導体 | 440 | 515 | -75 |
電気機器 | 413 | 481 | -68 |
通信機器 | 411 | 719 | -308 |
医療機器 | 348 | 369 | -21 |
コンピュータ周辺機器 | 303 | 536 | -233 |
コンピュータ | 147 | 608 | -461 |
食料品 | 1305 | 1300 | 5 |
(単位:1億ドル)
それ以外の品目はご覧のとおりでした。
黒字だったのは民間航空機と食料品ぐらいでそれ以外の品目は赤字ばかりでした。
唯一の大幅黒字である民間航空機産業をささえるのが、ボーイング、ロッキード・マーティン、ユナイテッド・テクノロジーズ、といった航空機メーカーです。世界の航空機メーカーランキングでは10社中6社がアメリカ企業です。
食料品の輸出額は1305億ドルと自動車部品等と同規模ですが、ほぼ同じ額を輸入しており食欲旺盛なアメリカ人が食料品の輸出額を減額するなんてイメージしにくいですよね。
ちなみにアメリカの経常収支IMFのデータベースで閲覧できる190カ国中ぶっちぎりの最下位190位ですが、名目GDPは18兆6244億ドルなのでこちらもぶっちぎりの1位となっています。
多くの国々は輸入した製品を加工して新たな製品を作って輸出していますが、その構図はアメリカには当てはまらないようです。
アメリカで生産されたものはアメリカ国内で消費されてしまう。名目GDPが世界一の国ならではの構図があるようです。
色々と調べれば調べるほど対中国1000億ドル貿易収支改善のハードルはとても高いものに感じてしまいます。
これ達成できるのでしょうか・・・・。
今後中国はどのような反応を示すでしょうね・・・。
本日はこの辺で。
今後の投資判断の材料にしていただけたら幸いです。
このコメントは編集者の個人的な見解であり、残念ながら内容を保証するものではありません。また、売買を推奨するものでもありません。ご了承ください。
参考文献:ジェトロ世界貿易投資報告2017年版(https://www.jetro.go.jp/world/gtir/2017.html)