チップとサービス価格
2022年04月26日
皆さま、おはようございます。CFP(ファイナンシャルプランナー)のワイワイこと岩井です。
ここ最近、物価に関係する記事が多めになっていますが、どうしても気になるのが国内外でインフレ率に差が生じているということです。
先週末発表された日本の3月の全国消費者物価指数は+1.2%でした。アメリカの消費者物価指数は+8.5%でしたので日米の間に7.3%ものギャップが生じています。
少し教科書的な話になりますが、もしも国内で取引されている商品のすべてが貿易財だった場合、取引される商品の価格は、国際市場で決定されるので、国内の価格と海外での価格は等しくなり、日本もアメリカも同じ物価変動になるはずです。
そうならないのは、貿易されていない商品があり、その商品の変動が国によって違うからです。
3月の消費者物価指数
・総合 ・・・ プラス1.2%
・財 ・・・ プラス5.0%
・サービス ・・・ マイナス2.5%
貿易財を多く含んだ財(有形財)の価格は+5.0%と大きく値上りしましたが、国内で消費され貿易されることのないサービスは、-2.5%と値下がりしてしまいました。
どうして、このようなことになるのでしょうか。
日米の物価変動の違いには「チップ文化」の存在が影響しているのでは?という仮説を立ててみたいと思います。
チップ文化のアメリカではレストランで食事をした時、ホテルでベットメイクしてもらいたい時、タクシーの乗った時などにチップを渡しますよね。
チップは、受けたサービスの対価として渡されていますが、その金額や割合は、概ね決まっています。例えばレストランで20%をチップとして支払うといった具合です。
100ドルの食事をした時には、その20%にあたる20ドルをチップとして渡し、120ドルの食事をした際には、24ドルをチップとして渡すことになります。
もしも、原材料価格が高騰し、食事の価格が上昇したとしてもその上昇した価格の中にサービスの対価(チップ)は含まれていないので、お店はサービスの量や質への影響を気にしないで価格を引き上げることができます。
チップのない国ではどうでしょうか。
日本にはチップという文化はありませんが、食事をしたり、ホテルに泊まったり、タクシーに乗った際、きちんとしたサービスを受けることができます。
サービスをタダで受けている訳ではなく、食事代、ホテル代、タクシー代の中にサービスの対価が含まれていると考えるのが自然です。例えば、和食を食べに行くと頼まなくてもお茶やおしぼりがでてきますよね。
お茶やおしぼりは、表面上無料で提供されていますが、これは顧客が支払う料金の中に含まれているからできることです。
問題になってくるのが、原材料価格が上昇した時にどうするかです。
サービス料が価格に含まれている場合、原材料価格の上昇分を他のサービスを削ることで補うことで、総額を維持して他者との競争力を維持することができてしまいます。
例えば、「布おしぼり」だったものを「紙おしぼり」に変更したお店に行ったことありませんか?
原価の上昇分のサービスを削ることで、価格を維持するという企業努力が行われた結果が、サービスの量や質の低下となって現れています。
もしも、日本がチップ文化の国だったとすれば、おしぼりのランクを下げるとチップの金額も下がってしまうので、そんな行動は考えられないはずです。
原材料価格の高騰をそのまま転嫁しやすい構造なのか。それとも経費を削る企業努力が促される構造なのか。この違いが現在の物価変動に現れていると考えるとしっくりきます。
皆さんは、どう思いますか?
今日は、サービス価格の停滞についてチップ文化という側面からアプローチしてみました。
このコメントは編集者の個人的な見解であり、内容を保証するものではありません。また、売買を推奨するものでもありません。ご了承ください。
・消費者物価指数(CPI)